従業員20名以下の会社で、「前任者が作ったシステムの中身を誰も把握していない」という状況は珍しくありません。

「この請求書計算Excelマクロ、なぜこの数字になるか誰も分からない」「5年前に外注したWebシステム、ちょっと直そうとしたら見積もりが80万円超えてきた」「担当者が退職して、引き継ぎ資料が何も残っていない」——こういった問題で困っている経営者・管理職の方は多いはずです。

この記事では、Claude Code(クロード・コード、AIが自動でファイルを読み込んで分析してくれるツール)を使って、「誰も把握していない古い業務システム・ファイル」を短時間で理解できる状態にする方法をお伝えします。プログラミングの知識は不要です。AIに「日本語で説明して」と頼むだけで始められます。

図: Claude Codeが古いシステムを解読する全体像(画像生成待ち)

なぜ「古いシステムの把握」がこんなに難しいのか

業務に使っているシステムやファイルが「ブラックボックス」になる原因は、主に3つあります。

1つ目は、作った人が退職していること。2つ目は、外注で作ったため設計書や仕様書が手元にないこと。3つ目は、何年もかけて少しずつ改修されて、誰も全体像を把握できなくなっていること。

これまでこの問題を解決するには、「詳しいエンジニアを雇って数週間かけて調査してもらう(費用:50万〜100万円)」か「もう使うのをあきらめて作り直す(費用:100万〜500万円)」の2択しかありませんでした。

Claude Codeを使うと、この調査フェーズを数時間〜数日に短縮できる可能性があります。

Claude Codeでできること・できないこと

まず正直にお伝えします。

Claude Code(月額約3,000円〜のサービス)は、ファイルやプログラムのコード(プログラムの設計図にあたるテキスト)をAIが読んで「これは何をするファイルか」「どういうルールで動いているか」を日本語で説明してくれるツールです。ターミナル(コマンドを入力する黒い画面)で操作するため、完全にノーコードというわけではありません。

ただし、「AIが何をしているか理解しながらコマンドをコピペする」レベルであれば、プログラミング未経験でも操作できます。

できること:

  • システムやファイルの「全体像」を日本語で説明してもらう
  • 特定の計算ロジックやルールを文書化してもらう
  • 「このボタンを押すと何が起きるか」を追跡してもらう
  • 改修前にどこに影響が出るかを事前確認する

できないこと(現時点):

  • 本番システムへの直接接続による自動改修
  • 100%の精度保証(AIの判断なので確認は必要)
  • セキュリティが特に厳しい金融・医療システムへの単独適用

図: 古いシステムを把握する4ステップの流れ(画像生成待ち)

ステップ1: まず「全体像」を把握する(所要時間:15〜30分)

システムやファイルを理解するとき、最初にやるべきことは「地図を作ること」です。個別のファイルをいきなり見始めると、どこを見ているか分からなくなります。

Claude Codeを起動して、次のような指示を日本語で入力します:

このシステム(フォルダ)全体を調べて、以下を教えてください:
1. 何のためのシステムか(一言で)
2. 主なファイルとそれぞれの役割
3. どのソフトウェアや外部サービスと連携しているか
4. このシステムを使うために必要な設定

推測ではなく、実際のファイルを確認した根拠とともに教えてください。

「根拠とともに」という一言を入れるのがポイントです。この指示があると、AIは実際にファイルを開いて確認してから回答するため、正確性が上がります。作り話(ハルシネーション、AIが事実と異なることを自信を持って答えてしまう現象)を抑えられます。

出力された説明は、そのままWordやGoogleドキュメントに貼り付けて「システム概要書」として保存しておきましょう。

ステップ2: 気になる部分を「業務ルール」に翻訳してもらう(所要時間:30分〜1時間)

全体像が分かったら、次は「なぜこの計算になるのか分からない」「この条件の意味が不明」という具体的な疑問を解消します。

例えば、請求書計算のロジック(計算処理の流れ)が不明な場合:

billing_calculator(または該当ファイル)の中の計算処理を読んで、
「業務仕様書」として書き出してください。

- どういう条件のとき、何をするか
- 数字(税率、上限額など)の意味
- 例外的な処理がある場合は、どんなケースか

専門用語は使わず、「経理担当者に説明するような言葉」で書いてください。

「経理担当者に説明するような言葉で」のような制約を入れると、AIは技術的な専門用語を避けて説明してくれます。

出力された仕様書は、社内資料として保存しておくと、今後の外注業者への説明資料として活用できます。外注業者への説明が正確になるだけで、見積もり精度が上がり、「想定外の追加費用」が減ります。

ステップ3: 「どこを触ると何が壊れるか」を調べる(所要時間:1〜2時間)

古いシステムで最も怖いのは、「一部を変更したら別の場所が壊れた」というケースです。Claude Codeに依存関係(あるファイルが別のどのファイルを参照しているかの繋がり)を調べてもらいましょう。

calculate_tax(または調べたい処理の名前)という処理が、
システム内のどの部分から使われているか、全部洗い出してください。

- 直接使っている箇所(ファイル名と場所)
- 間接的に関係している可能性がある箇所

この処理を変更した場合に影響する範囲を教えてください。

この調査をしておくと、外注業者に改修を依頼するとき「ここを変えても大丈夫か?」という議論ができるようになります。見積もり80万円が「実は30万円の影響範囲だった」と分かることもあります。

図: 自力調査 vs 外注 vs Claude Code活用の比較(画像生成待ち)

ステップ4: 調査結果を「引き継ぎ資料」としてまとめる(所要時間:30分)

ここまでの調査で得た情報を、テキストファイル(SYSTEM_NOTES.txtなどの名前)にまとめておきましょう。

まとめる内容の例:

# 請求書計算システム メモ(2024年1月 調査)

## システムの目的
顧客の月次請求書を自動計算して、PDFで出力するシステム

## 重要な処理
- 消費税の計算: billing_calculator の45行目付近
  → 軽減税率(8%)と標準税率(10%)を自動判別している
  → 判別条件は products.csv の「category」列を参照

## 注意点
- products.csv を変更すると税率が変わるため要注意
- 月末の0時に自動実行される処理がある
  (cron(クーロン)とは、決まった時間に自動でプログラムを動かす仕組みのこと)

## 外注する場合の注意
- この処理を変更する場合、invoice_mailer にも影響する可能性あり

このメモがあるだけで、次に外注業者や新しい担当者が来たとき、ゼロから調査し直す必要がなくなります。調査コストを1回分節約できるだけでなく、「業者任せ」になっていた部分に自社の目線が入るようになります。

実際にかかる費用・時間の目安

Claude Code(有料プラン)の費用は月額約3,000円〜です。API利用料(AIを呼び出した分だけかかる従量課金)が別途かかりますが、この種の調査であれば1回あたり数百円〜数千円程度の範囲に収まることがほとんどです。

比較すると:

  • エンジニアを雇っての調査: 50万〜100万円(1〜2ヶ月)
  • 外注での調査レポート作成: 30万〜80万円
  • Claude Codeを使った自社調査: 月3,000円+API費用数千円

もちろん、Claude Codeだけで全て解決するわけではありません。複雑な改修や本番環境の移行作業はエンジニアに依頼する必要があります。しかし、「何が問題か」「どこを直せばいいか」を把握した上で依頼できると、見積もりの精度が上がり、無駄なコストを削減できます。

この方法が特に向いている状況

次のような状況に当てはまる方には、特に効果的です:

  • システムの担当者が退職して、引き継ぎ資料がほぼない
  • 外注で作ったシステムを改修したいが、見積もりが高すぎると感じている
  • 古いExcelマクロやAccessデータベースの仕組みを誰も把握していない
  • 新しいシステムに移行したいが、現行システムの仕様が不明
  • IT担当者はいるが、経営層が「何が動いているか」を把握できていない

逆に、完全に新しいシステムをゼロから作る場合や、セキュリティ要件が特に厳しい金融・医療システムの場合は、専門家との併用が必要です。

まとめ

「誰も把握していない古いシステム」は、多くの中小企業が抱える共通の悩みです。以前はこの解決に数十万円〜数百万円のコストがかかっていましたが、Claude Codeを使えば月数千円のコストで「まず全体像を把握する」というスタートラインに立てます。

完璧な解決策ではありませんが、「外注業者に全て任せる」前に、自社でできることを増やすという意味で、試してみる価値は十分にあります。まずは、一番「ブラックボックス」になっているファイルを1つ選んで、Claude Codeに「このファイルは何をするものか、日本語で説明して」と入力してみてください。