金曜日は、この1週間のAIニュースをまとめてお届けしています。今週は派手な新モデルの発表がない代わりに、AIに仕事の文脈を覚えさせて組織に根づかせる、地味で実務的な更新が各社で揃いました。

だからこそ今週は、ニュースを見る物差しを1つ提案します。AIが賢くなったかどうかではなく、自分の仕事の前提をAIがどれだけ覚えて、次の作業に引き継げるようになったかで見る。この目で見ると、今週の6本はきれいにつながります。

まず、世間をいちばん騒がせた動きからです。

AppleがOpenAIを提訴、争点はAIハードウェア

7月10日、AppleがOpenAIと元Apple社員2名を、営業秘密の持ち出しを理由に連邦地裁へ提訴しました。製品設計や製造工程、サプライチェーン戦略といった機密情報が、採用面接の場まで使って組織的に集められたとAppleは主張しています。OpenAIのハードウェア責任者は元Appleの幹部です。

私の見立てでは、この訴訟はOpenAIがAI専用デバイスを本気で作っていることの裏返しです。チャット画面の外、手元の機器そのものにAIを入れる競争が、巨大企業が法廷で争うほどの段階に来ました。今すぐ何かを変える必要はありませんが、AIはアプリの中の話だという前提は数年で崩れると見ておいたほうがよいです。

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Claudeのメモリが日次要約から項目別の記憶に

同じ7月10日、Claudeのメモリ機能が刷新されました。これまでは1日の会話をまとめた要約として記憶していましたが、今後はテーマごとに分類された個別の記憶として保存され、会話の最中にClaude自身が読み書きします。

地味に見えて、今週いちばん実務に効く更新だと私は考えています。AIに仕事を頼むときの最大のコストは、毎回ゼロから前提を説明し直すことです。記憶が細かくなるほどこのコストが消え、使い込んだ人と昨日始めた人の差が、記憶の量として積み上がる構造になりました。

週明けの一歩としては、Claudeの設定でメモリがオンになっているか確認したうえで、自社の業種・規模・主力商品・よく使う書式を一度まとめて話しておくことをおすすめします。以後の依頼が短い指示で済むようになります。

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ChatGPT、カスタム指示の上限が5,000字に拡大

7月15日、ChatGPTのカスタム指示(毎回の回答に自動で反映される、自分専用の前提設定)の上限が、有料プランで1,500字から5,000字に広がりました。あわせて、過去のチャット・プロジェクト・画像・文書を一箇所から横断検索できる機能も全プランに展開されています。

方向はClaudeのメモリ刷新と同じです。AIへの指示文が、使い捨てのメッセージから、育てて使い回す資産に変わりつつあります。5,000字あれば、自社の文体、書いてはいけないこと、報告書の型まで書き切れます。

ChatGPTの有料プランをお使いの方は、週明けにカスタム指示の画面を開き、これまで毎回コピペしていた前提文をそこへ移し替えてみてください。それだけで日々の手数が1つ減ります。

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Microsoft 365 Copilot、プロンプトの全社共有が可能に

7月15日付の月次リリースノートで、Copilotのプロンプトギャラリーに自社専用のプロンプトを全社公開できる機能が加わりました。ほかにも、ブランドガイドラインから資料用の配色やロゴ一式を自動生成する機能、WordやExcelからエージェント(人の代わりに一連の作業をこなすAI)を呼び出す機能など、7月前半だけで多くの更新が入っています。

見立てはシンプルで、プロンプトが個人のメモ帳から会社の備品になった、という話です。うまい頼み方を属人化させない仕組みを、Microsoftが標準機能として用意し始めました。

Copilot導入企業の方は、社内でいちばんAIの扱いがうまい人のプロンプトを3本選んで公開するところから始めてみてください。

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Anthropic、米国の教員向けにClaudeを無償提供

7月14日、Anthropicが米国の幼稚園から高校までの教員向けにClaude for Teachersを発表しました。認証を受けた教員は上位機能を無償で使え、全50州の学習指導基準に対応した授業づくり用のスキル集(作業手順をAIに教え込むテンプレート)が付属します。

日本の読者に直接の影響はありませんが、流れとして重要です。汎用のチャットをそのまま配るのではなく、職種ごとの手順書を同梱して配る形が標準になりつつあります。教員の次は、経理・人事・営業といった職種パックが来ると私は見ています。自分の定型業務を1つ、手順書として書き出しておくと、この流れが日本に来たときにすぐ乗れます。

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ノーベル賞受賞者16人を含む200人超が経済への備えを要求

7月13日、スタンフォード大学のデジタル経済研究所が、経済学者とAI研究者200人超の連名による声明を公開しました。ノーベル賞受賞者16人が名を連ね、AIは今後10年で産業革命を超える規模の経済変化を、はるかに短い期間で引き起こしうるとして、政策と制度の準備を今すぐ始めるよう求めています。

これは悲観論ではなく準備論です。そして準備の速さでは、大企業より中小企業に分があります。承認会議を3つ通さなくても、来週から仕事のやり方を変えられるからです。この声明を国の政策の話としてではなく、自社の話として読むのが正しい受け取り方だと私は思います。

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今週のまとめ

賢さ比べの段階が一段落し、記憶・共有・職種特化という根づかせる段階に入った。それが今週の6本に共通する動きです。来週以降も、何ができるようになったかではなく、自分の仕事の前提をどれだけ覚えて引き継げるかという目でニュースを見ると、取捨選択に迷わなくなります。

自社ではどこから手をつけるべきか、30分で整理したい方はお気軽にどうぞ。無料30分相談を申し込む

それでは、よい週末をお過ごしください。来週の金曜日にまたお会いしましょう。